metukiwaruiko’s blog

まだ内緒の話

好きな作品の話

風邪をひいた。

久方ぶりに身体を壊した。全身の痛みは昨日からしていたけど、てっきりあの馬鹿猫を救出する時に無理をした身体の痛みだと思った。

一日中働いて、クタクタになって自分も雨に濡れて帰ってきて、そこからずぶ濡れの猫を救助した。

自分のシャワーよりも何よりも猫のシャンプーを最優先して、ドライヤーで時間をかけて乾かしてご飯をあげて暖かい所で寝かせてやった。

骨折の痛みは悪化したし、全身の痛みで寝れなかった。骨が折れてるのに飛び上がったりよじ登ったり飛び降りたりしたから。

激痛よりも猫をなんとか捕まえることの方が上回った。当然全て終わって寝る頃には最悪の状態だった。

それでもまた次の日朝から仕事に行った。

 

 

 

また猫が居なくなった。らしい。

 

夫が洗濯物を取り込む際にばっと飛び出たらしい。

そして帰ってこない。

私があれだけの自己犠牲をしても、猫は返してはくれなかった。

 

風邪の原因は何だか分からない。

ホテルで移された可能性も大いにあるし、電車の中かも知れないし、疲労の蓄積かもしれない。

猫を助けるためにしばらく雨に濡れたあの夜が原因かも知れない。

 

最早、どうでもいいことだ。

 

もうどうでもいい。不思議と悲しくも寂しくもない。あいつは野良に帰りたかったのかも知れない。

餌の保証もない、ましてほとんど今住んでる所の外は出たことがない、爪もそこまで尖ってない、餌のとり方なんて知らないだろう。

温室育ちだから冬毛にもなってない。

 

そんな元野良とはいえ、家猫である時間の方が圧倒的に長いあの馬鹿は、自分で出て行ったのだ。

 

餌はきっと取れないかも知れない。また雨が降ったら濡れて震えてるかも。

雨が降らなくてもこんな真冬の寒空の下、きっと凍えてるに違いない。

 

それでもあいつが選んだことなのだ。

もう探すこともしない。

 

多分、あいつはもう帰ってこない。そんな気がする

 

 

風邪をひいた。

珍しく熱が出て、酷い頭痛と全身の痛みと、軽度の吐き気に、激しい悪寒と大分重症だ。

気力で持たせていた分、一度崩すと症状が一気に出る。

ロキソニンを買ってきてもらって、鍋を食べてアクエリアスをがぶ飲みしたら多少は良くなった。

 

風邪と猫の件で多少精神的に辛くなってしまったので、激甘のココアを作って飲んだ。

とっておいた安定剤も一緒に飲んで、瘡蓋を抉る程度で済ませられた。

 

せっかくの休みなので、好きな作品にでも浸ろうと思って。

自分のご機嫌は自分でとらなければならない。

当たり前のことでも、昔の私にはそれが難しかった。

 

好きな漫画、一位は何と言っても浅野いにお。それに次ぐのが魚喃キリコ

それから、丸尾末広古屋兎丸岡崎京子安野モヨコゴトウユキコ押見修造中村明日美子、にくまん子、今日マチ子

沢山居る。ここら辺は作者で本を買っているから、ここだけで本棚が大抵埋まる。

 

作品単体だけなら『潜熱』とか、『銀河伝説銀』とか、『ヘルシング』とか『うしおととら』『アクタージュ』『ランウェイで笑って』その他沢山。ここに挙げるとキリがない。

 

余白がある漫画が好きで、読んでいると風の匂いまで分かりそうな、懐かしくなるような漫画が好き。

でも泥臭く、人間くさい作品も好きだ。ウシジマくんも読むし、カイジも読んだ。

 

ジブリも大好きで、特に千と千尋の神隠しが好き。最近観れてないな

 

逆に少女漫画はてんでダメで、読むだけでアレルギーを起こしそうになるくらい。

特にヒロインがじれったい性格だとか、好きになった男の子が学校一くらいイケメンで優しくてモテモテで、そんな人が自分なんかを気にかけてくれて、みたいなやつ。

超嫌いなんだ、ダメなんだー、ああいうの。

 

つい、現実と重ねてしまう

 

イケメンは美人を選ぶし、美人もイケメンを選ぶ。たまに顔面偏差値が釣り合わないカップルも居るけど、大抵はお金か、もしくは余程別のことに秀でているものを持っているかなのだ。

うじうじしてて、奪う気もなくて、ましてほとんど話さないようなクラスの陰キャ陽キャの王子様が好きになる必要性がないし、そんな可能性はほとんどない。

 

夢物語で、それも超絶都合が良すぎる展開ばかりの少女漫画が大の苦手なのだ。

だから私はほとんど少女漫画を知らない。

 

そもそも絵柄が得意じゃない。何だあの眼のデカさは。カラコンとアイプチしたってああはならない。それに比べて顔の小ささよ、最近の少女漫画は髪に芋けんぴが付くらしい。

あとやたらとセックスの描写を綺麗に描きすぎているのも気に食わない。

 

セックスなんて、もっと獣くさいものだろうが。

子作りするための、イルカと人間にだけ付いてきた快楽行為なんだから。あと、蝉もだっけ?

 

肉を交えて相手を欲するというのは、そんな綺麗なもんじゃない。

 

 

少女漫画が苦手という話はこれくらいにしておいて。

 

閑話休題

 

 

好きな作品の話。

アニメもあまり観ないな、繰り返し観るのはヘルシングとBLACKLAGOON、賭ケグルイカイジあたりではないだろうか。

アニメは今でこそそういったサービスで全話観られるようになったものの、私が一番アニメを観ていた時期はそんなサービスはなかったし(そもそもインターネット環境が揃うようになったのは私が18になってからである)

アニメって毎週一話ずつな訳で。

 

待つの嫌いなんですよ。

 

 

いっつもいい所で終わっちゃうし、何なら塾とか習い事とかで時間が延びちゃうと観れなかったりとかで、話が飛んだりするともう観るのをやめちゃうんですよね。

堪え性が無いから。どうでもよくなっちゃう

 

だから、本当にギリギリまで皆で公園で鬼ごっことかして遊ぶ方がよっぽど楽しかったし、田舎っ子だから皆結構大きくなるまでゲームなんて持ってなくて、中学生になっても木登りとかして遊んでいたし、いじめられながら、時々ひきこもりながら、それでも部活には真面目に行ったしコンクールで賞も取ったし、根っからの根暗ではなかったから良かったのかなと思う。

あれ、また話が逸れた。

 

そんなこんなでアニメはあまり観てなかったけど、深夜アニメとかはたまに観てたな。

リアルタイムで頑張って観てたのは、キングダム、さよなら絶望先生ロザリオとバンパイアああっ女神さまっ狂乱家族日記とか、そこら辺だろうか。

 

天上天下観てみたかったな

 

 

GTOとかも好きだった。

 

 

 

映画は邦画も洋画もどっちも観る。

邦画だと好きなのは『怒り』『失楽園』『ヘルタースケルター』『蛇にピアス』『渇き。』『冷たい熱帯魚』『嫌われ松子の一生』とか。

 

洋画は『RED』『プラダを着た悪魔』『ホリデイ』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『ミスト』『ザ・コア』『LEON』『ターミナル』『永遠に美しく』『タイタニック』『ビッグフット』『クリッター』『スリーハンドレッド』『ジュマンジ』『ファイナルデッドコースター』などなど。

他にも色々あるけど、まぁ大抵ネトフリやアマゾンプライム、ユーネクストなどにあるような作品は大体観ている。

 

音楽は80-90年代が一番好きで、中森明菜が一番好き。アニソンもボカロも聴くけど、最近の流行りはほとんど分からない。

インディーズの邦ロックとかもめちゃくちゃ聴く。

大御所だと、人間椅子とか筋肉少女帯とかだろうか。

凛として時雨も9mmも好きだったけど、ほぼメジャー化してからは聴かなくなってしまった。

嘘つきバービーとか、毛皮のマリーズとか聴いていた時代は、私は制服を着ていたし、最高に性に狂って壊れた時代を送っていたから思い入れがある。

クリープハイプとかも、随分懐かしいバンドになってしまった。銀杏BOYZ

 

洋楽だとSystem Of A Downとか、Die Antwoordあたりかな。

 

ちょっと宗教めいた香りのする洋楽が好きだけど、こちらも80-90年代の洋楽あたりは色々聴いたりする。

 

サイモン&ガーファンクルとかも好きだし

 

 

 

新年明けて、嬉しいこともあったけど失うものが少しだけ多くて悲しくなってしまったから、たまには好きなものの話でもしようと思ったのでした。

 

 

今度は恋人の好きなものの話とかも聞いてみたいなあ。

ゆっくり、のんびりしたいねえ。

早く体を治して無敵マンになりたい、そんな宵でした。

 

 

年末年始の話

明けましておめでとうございます

本年も宜しくお願い致します。

 

年末年始、ずっと恋人と一緒に居た。晦日は会社の忘年会があって、とても楽しかった。

皆それぞれ楽しんでいたし、私もバタバタながらにとても楽しく、そもそも人の世話をするのは好きだからああいうことには慣れている。

 

楽しかったなぁ

 

別店舗の店長(になる人)が、当たった一等の宿泊券を私にくれると言う。

二人で行ってきなさいと言ってくれた

 

私は無事インセンティブ一位も取ったし、なぜか取締役から某ホテルの食事券みたいなのも頂いてしまった。

 

忘年会が終わったあと、あの家に戻って、そこから先輩が実家に帰り、二人で家でぼんやりしてた。

晦日は、ずっとテレビを観ながら食べて寝てを繰り返していた気がする。

ゆく年くる年も観れたし、年越しも二人で越せたことを嬉しく思う

 

最近の恋人は、付き合いたての頃よりも愛情表現を口にすることはめっきり無くなった。

最初はそれで飽きられたんじゃないかとか、捨てられるんじゃないかとか色々思ってたし、不安にもなって情緒不安定になることもあった

 

けど、最近はもうそんなことも思わなくなった。恋人はその分行動で示してくれるから、口よりも行動に出してくれる人の方が安心するものなのだな、と学んだ。

 

あと、「こういう人なのだ」という考え方に至るようになった

 

元彼は散々人に罵声暴言を浴びせるだけ浴びせて、その割に行動にも滅多に出さない人だった。

気まぐれで色々してくれたりすることもあったけど、それは本当に気まぐれでしかないから、私はその度に一喜一憂して傷ついていた。

そして、相手に求めてばかりいた。どうしてそんな酷いこと言うの、もっと愛してよ、大事にしてよと

 

あの頃は若かったなあと思うし、青かったなぁとも思う。

 

 

でもそれを思えるようになったのは、相手が恋人だからなのではないかと思う。

何となく、とても相性がいいと、勝手に感じている。

 

肌が触れているだけで心地が好い。

匂いも何もかも全部好き、ただ手を繋いでいるだけで眠くなる。

傍に居るだけで安心するのと、話をしなくても沈黙があってもそれは嫌な沈黙では決してなく

 

なぜかとても安心するのだ。

 

親のような安心感とはまた別の、どちらかというとアロマテラピーに近い感じの。

 

人混みが嫌いだとか、外に行くのが面倒だとか、そういう事を言いつつも私が行きたいと言えばちゃんと一緒に行ってくれる、寝てても私の手をちゃんと握ってくれたり、指を絡めれば握り返してくれたり、私の足先はいつも末端冷え性で冷たいからか、意識が無い状態でも必ず足先を暖めるように足で挟んでくれたりとか

 

そういう事をちゃんとしてくれるから、信じられるのかもしれない。

私がこんなにも他人を信用するのに日がかからないことは今まで一度も無かった。

夫ですら、二年かけてようやく分かりあったのだ。

 

 

それでも、好きという気持ちが強すぎるが故に、それは身体を求めるという安易なやり方しか知らない私が唯一できる愛情表現なのだけど

 

男の人って消費するものね。

 

 

どうしたらいいんだろう、どう求めたらいいんだろう、そもそも自分は何を欲しがっているんだろうと考えていたら、経験のないことに耐性のない私の頭はすぐにこんがらがって、挙句薬も切れていたのでパニックを起こした。

 

が、パニック障害になって早6年、落ち着くのに時間はそんなにかからなくなった。

 

私のメンタルは一度19の頃に粉々にぶっ壊れているから、しばらく精神科に通っていたし薬も飲み続けていた。

 

今はもうたまにしか行かないが、大事なものが離れそうになると混乱する癖があるので、だからこそ恋人を「こういう人だ」という考え方を定着させて付き合っていかねばならない。

 

大事で大好きな恋人だからこそ、これ以上負担はかけたくないし、私自身も恋人にとって安心できる相手であって欲しいのだ

 

今度から甘いものを常備しようと思った。できればチョコ、冬場は甘いココアがいいな。

 

恋人が前に言った「老夫婦のような、気を遣わない関係が一番いい」という台詞を頭の中でぼんやりと思い浮かばせて、穏やかであろうと思った。

 

安らぎをいつか与えることができる彼女でありたい

 

穏やかに二人で過ごしたいなあと思う

 

 

だから恋人のことを盲信的に見るのではなく、かと言って意地を張るのでもなく、ただただ受け入れて二人でゆっくり生きていければそれでいいと思う

 

ちなみに恋人におみくじの結果を予言されて、それがまんまと的中し、何なら恋人とお揃いの末吉だった。

 

書いてあることは大分違っていたけど、多分今年はこういう年なのかな、と思って今年もまた一年頑張れたらいい

 

二回目の大吉は無効化されてしまったので笑笑

 

 

26歳になる年が明けた。

今年も一年いい年になるといいな

 

恋人よ、今年も宜しくね。

 

 

一日の話

昨日は帰宅してから、翌日早入りだということも分かった上で、魚喃キリコを全巻読み漁っていた。

そして、今日は仕事を終えて、クタクタになって帰ったあと、夫が作ってくれた料理を一緒に食べた。久しぶりに、一緒に食事をした気がする

夫は年末調整ではなく確定申告として全てを自分一人でやらなきゃいけないことが判明したらしく、あれもこれも◯日までにやらなきゃいけない、憂鬱だ、とぼやいていた。そうか、大変だねえ、と愚痴を静かに聞いていた

 

最近忙しいの、と仕事の話になる。忙しいよ、繁忙期だしね、とご飯を食べながら返した。あまり無理しないようにね、身体が資本なんだから。あなたはあまり身体が強い方じゃ無いんだから、と心配してくれた。ありがとう、あなたも無理しないでね、と返した。非常に穏やかな夜ご飯だった。そしていくつかの話をした

 

「うちのバーにこういう人が来て、今日こんな感じだったよ。忙しかったし疲れた」

 

「お疲れ様、うちも今日忙しかったよ。明日は現場が嫌な所だからちょっと憂鬱」

 

「どこ?」

 

「〇〇」

 

「ああ、それ嫌だねえ。変えてもらえないの?」

 

「お願いしてみたんだけど、何か俺以外行けるって人が居なかったらしくて、結局変えてもらえなかった…‥」

 

「ああ、まああなた仕事できるからね。仕方ないね、モテる男は辛いわね」

 

「俺は宵にだけモテてればそれでいいよ」

 

何を言ってんの、と笑ってはみたものの、胸にぐさりと何かが刺さる。ごめんね、と心の中で謝る。

 

 

 

夫は朝が早いので、先に寝るね、と煙草を吸いながら眠そうに言った。私はちょっと疲れたから、湯船に浸かってから寝るわ、と返した。

おやすみ、と言って部屋の扉を閉める。本当は何気ない夫婦の日常の一つで、幸せなことのはずなのにね。私は毎日、この人の寝顔を見るたびに心の中で懺悔する

 

心が壊れそうになるたびに、付けっぱなしのネックレスを握る。夫に、宵がネックレスをずっと付けたままにするの珍しいね、よっぽどお気に入りなんだね、それ、と話しかけられた時、思わず苦笑いした

 

本当に、穏やかな夫婦だと思う。夫は何も悪くない。

ただ、私がダメな人間なだけだった。それだけのこと

 

 

そんなことを考えながら、ぼんやりと煙草を吸う。昨日、恋人にとてつもない負荷を掛けてしまった。自己嫌悪に満ちて、気性の荒さが最高潮に至ったけど、ふとした瞬間に全てがどうでもよくなった。

 

諦めた、というより、思考することを手放した。

 

 

鏡に映った自分の裸を、久しぶりにまじまじと見つめてみたけど、本当に肉が落ちたな、と思った。骨が浮いて、最低限の筋肉が何とか体を維持させようと努めているだけの、脆そうな体をしている。今や本当に気力だけで持たせているような、自分でもよくもまあ、こんな貧相な身体であの仕事量をこなしているな、と思う

そして、よくもこんな文章をつらつらと十年以上書き続けているなと思う

 

浴室内の電気が点かなくなって、もう半年くらい過ぎた。電球が切れたわけではなく、もっと別の回路的な問題らしい。夫に連絡しといて、と頼んだけど、結局連絡してもらえないから、半年経った今でも我が家の浴室は暗い。だから、脱衣所の電気と鏡の電気をどっちも点けて、間接照明のようにしてお風呂に入る。

 

浴槽の栓をして、お湯を溜める。溜まるまで、寒い、と思いながら私は浴槽の中で体育座りをする。少しずつ溜まっていくお湯を眺めながら、スマホで動画を観る。動画に夢中になっていたら、いつの間にかお湯は結構溜まっていて、ようやく脚を放り出した。シャンプーとコンディショナーの匂いが、湯気と共に立ち上っていく。これで、窓が付いていたら完璧だったのに、と思う

 

実家のお風呂は窓がある。わざと熱いお湯を沸かして、のぼせそうになったらその窓を開けて、景色を見ながら湯船に浸かるのが好きだった

 

ホテルに行っても、窓が付いているお風呂は絶対に開けてしまう。そしてそこから夜の景色を眺める。冷たい風と、熱いお湯と、流れていく湯気と、お風呂独特のいい匂いが夜風と交換されるように浴室の中で混ざり合うのが大好きだった。

 

そんな一人でも味わえる贅沢があるのだから、もう人に何かを求めすぎるのはやめようと思った。私は一人でも大丈夫、一人でも時間を潰せるし、固執しすぎる必要はどこにもなくて、丁度いい微温湯程度の人付き合いができれば、それでいい。なぜ、あんなにも必死になったのか、余裕がなかったのか、ああそうか、生理のせいだ。

 

そんなことを風呂場でずっと考えて、自分の中で何かがすっと落ちた。重い人間である必要はない、もっと気楽に考えればいい。そんなこと二五年の経験則の中で解りきっていることなのに、感情が追いつかなくなっていたのが昨日までのこと。生理って人の思考までも乗っ取るから、本当に怖い。

 

まるで取り憑かれていたかのような恋人への必死さは、もう無くなって、穏やかに、嫋やかに、緩やかに、恋人が好きだと思った。そしてそれは縛り上げるような窮屈さはなく、本当に静かなものへと形を変えて、私自身もゆとりを取り戻したのだった。

 

いつか、恋人と一緒に暮らす日々が始まったら、今のように落ち着いた日々が続けばいいと思う

 

重い、という自分の感情も好きじゃない。余裕を持って、ゆとりを持って生きていたい。誰かと時間を共有するのなら、それは静かで穏やかなものがいい。眠る時、たまに誰かの体温があってくれればそれでいい。静かな寝息が聞こえてくれればそれでいい

人に何かを預ける私が間違っていた、し、依存するものではないな、と

 

風呂上がり、自分からとてもいい香りがした。柚子の香りがして、全然関係ないのに、なぜか何となく、年末だな、今年ももう終わるんだな、と思った。

多分、今年の終わり、何かが私から無くなる気がする。誰か何かを失う気がする。それは大勢かもしれないし、少ないかもしれない。誰か何かもわからないけど、そんな気がしてならない。

そして新しい年はきっと、少しだけ泣くことになるような、そんな気がするのだ。

 

髪の毛はまだ半乾きで、だからこそ香りが強くて、お風呂の匂いってどうしてか昔からとても大好きで、わざと半乾きのままにしてしまう

 

煙草に火を点けて、音楽をかけてボーッとする。何かを考える時もあるし、何も考えないこともある。身体がまだポカポカと熱くて、部屋の冷気が心地好い。

 

私が吸っているアメスピは、一本が長いから、吸い終わる頃には少しだけ熱も引いて、寒さも感じるようになる。そこで初めて、部屋着と着る毛布を羽織って、温かいココアを淹れる。

 

今に至る。

 

 

今、とても穏やかである。何となく頭の中に浮かんだのは、恋人と最後に行った鶯谷の、駅から見た秋のような空だった。

今なら、恋人の理想とするような老夫婦のような、穏やかな時間が過ごせると思うし、もう必死になったりしがみつこうとする私はどこにも居なくて、静かに、静かに好きなことをしている。

未来のことで不安にもならないし、その不安のせいで焦燥感に駆られて人に縋ろうともしないし、離れていくものを追おうとも思わない。

 

穏やかな自分の時間が流れている。ゆっくりと、ゆったりと流れている。今の自分は、多分世界一幸せなのではないか、と思ってしまうくらい多幸感に満ちている。幸せな、深い夜の話。

 

 

 

 

 

欲しいものが手に入りません。

昨日恋人が休みの日だったから一日一緒に居た。

居酒屋で飲んで食べて、最後恋人の店に行ったのだけど、やっぱり私はあのマネージャーが気に食わない

 

せっかくの恋人とのデートだったのに、最後の最後で謎の説教食らったのも気に食わないし、何か思う所があるなら自分で解決しろよ、と思った次第だった。単純に、幸せな記憶の一片に、あのマネージャーへの苛立ちが残ることが許せない

 

私はかなり短気なので

 

 

恋人に居酒屋で言われた、どのくだりで言われたかは忘れてしまったけど「お前みたいに弱い人間が」って言葉が刺さって抜けない。弱いかな、弱いんだろうけど、そこまで脆くはないのだ。私は全部自分のことは自分で決めてきたし、そのための犠牲もきっちり払ってきて、何人もの友人や恋人の死も乗り越えて、今こうして25年立ち続けているし、そんじょそこらの同い歳とは比べ物にならないくらい強いはずなんだ。私の何が分かるんだ、と、この時までは思っていた。

 

でも、それは後ほど全てその通りだったと思うことになる

 

その後、恋人の店に行って、ベロベロになるまで飲んで帰ったのだけど、そこら辺からは私も記憶が断片的だ。

 

コンビニに寄るまで、恋人は何度も脱走し、座っては脱走しを繰り返し、コンビニでは本当に食べるの?と言うようなものを片っ端からカゴに突っ込み、帰宅した。

 

服を脱ぎ捨て、タンクトップに着替えてベッドに倒れ込んだ恋人が心配で、ひたすら口移しでアクエリアスを流し込んで様子を見た。

 

今までで一番の酔いっぷりだったので、ただただ心配だったのだけど、それもまた可愛らしいと思いながら眺めていた。

 

そこから随分と手荒くされましたな

 

首をあんな風に絞めてくる人は初めて出会った。頸動脈を握る、もしくは抑えるSM的な絞め方ではなく、ただただ喉を潰すやり方で、でも不思議と痛みは少なくて、ただ苦しい、息が出来ない。

意識が途切れ途切れになっていたのは覚えている。

 

身体中咬まれ過ぎて全身が今でも痛い。

でもその痛みが愛おしい

 

行為の最中、恋人はずっとどうしたい?どうすればいい?と聞いてきて、私はどうしたらいいのか分からなくて、何度も首に手を掛けるのだけれど、力も技も通用しなくてその度にやり返されて、咳込むしかできなかった。

 

恋人が欲しかった。

 

でもそれはただ身体が欲しいんじゃなくて、恋人の全てが欲しかった、のに、求め方も私は知らなかった。

中身を外から引きずり出す方法なんて、知らなかった。

 

 

殺す、と呟いて首を絞めようとしたけど、すぐに絞め返されて力が入らなくなって、私は求め続けることすらできなくて、殺せもしなかった。

 

殺すのか?できるのか?殺してどうする、欲しいならどうすればいい?

 

その質問に何も答えられなくて、その時に初めて自分が弱いことを知った。

 

分からなくて、どうしたらいいのか、全く分からなくて、恋人が欲しいの、どうしたらいいのって泣きながら聞いたら自分で考えろ、甘えんなと言われたのでまたボロボロ泣いた。

 

冷たく感じたからではなくて、自分の無力さと弱さに情けなくなって涙が止まらなかった。

結局私にできることは、恋人の名前を狂ったように呼び続けることしかできなかった。

 

他にもこうして、彼にあんな風に責められた女が過去に居たのだろうか

 

首を絞める技術が確実なもの過ぎて、それは多分今冷静に考えたら喧嘩などで培ったものなのだろうけど、あの時頭がすぐにそっちにいってしまった

 

何度でも言うが気が短いので、嫉妬で殺してやろうと思った。

 

 

多分、私が恋人を殺せる日が来ることはないだろう。薬や毒を使わない限りは。

 

昨日何度、恋人の首を絞めてやろうとしただろうか。

結局一度も成功しなかった。

力で敵うことはなかった。

 

でも、私は恋人を求める他のやり方を知らない。

 

殺してしまったらもう二度と恋人に触れることは出来ない。それは悲しくて耐えられない。

かと言って、生きたまま内臓を抉り出すにしても、やっぱり死んでしまう。

人間、五臓六腑を取り出しても生きていられることはないものだろうか。

もしくは、命が複数個あったら、一つくらい潰して見てみたかった。

恋人が欲しくて、ただ抱かれるだけでは物足りなくて、もっと深い部分までも全部欲しくて、足りなくて足りなくて寂しかった。

 

恋人はあっさりと私を食い荒らすことができるのに、私は何でできないのだろう。

 

力が弱い、技もない、通用しない

首を絞めたって通じない

爪を立てたところで浅いし、噛み付いても肉まで咀嚼する前に届かなくなる。

その点恋人は幾らでも私を御することができるし、私はあっという間に組み敷かれるだけだし、悔しくて悔しくて

 

涙が出てくるよ

 

 

あんなにも強い殺意を抱いたのは初めてかも知れない。憎悪とかではなく、単純に愛情が許容量を超えてしまったが故の純粋な殺意。

私の親族が皆死んで、私一人だけになったら別に捕まったって構わない。

恋人がもしこの先死ぬことがあったとしても、それは病気だとか事故だとか、まして私以外の人間の手に掛かって死ぬことなんか絶対に許さない。

私以外のことで死んで欲しくないだとか、そういうことがしばらく頭の中で渦巻いていて、眠れなかった。

 

酔っ払った恋人は容赦なかったし、私は何も勝てなかったし、惨めだった。

 

 

今でもどうしたらいいのか分からない。

どうやって求めるのが正解だったのか、何が正しかったのか。

身体で繋がってもまだ足りない。もっと奥の、手の届かない部分までも繋がらないと全然足りない。

全てを知りたいし、ずっと一緒に居たいし、寧ろ溶けて一緒になってしまえればいいのにとすら思う。

私の愛情はどう頑張っても軽くはできない。本気であればあるほど、重く暗く狂気の沙汰としか思えない。

 

再生さえするのなら、バラバラにして一つ一つの血と肉片を何も加工しないで食い啜りたいくらいだ。骨も爪も髪も、全て食い尽くしてやる。

 

そういった欲望を心の内に秘めて、押さえ付けていたら、どんどん性癖が歪んでいった。

 

今の恋人程、自分の内側のドロドロが溢れることはまずなかったし、自分でも重いな、と苦笑する。

 

愛おしすぎて涙が出るし、人を失うかも知れないことに対してここまで恐怖を感じたのも初めてだ。

人なんて代わりがきくものだと思っていたし、執着した所で大事に思っていた人間は皆私を遺してあっさりと逝ってしまったから、固執したって仕方ないと思っていた。

失くしてしまったら、次にまた見つければいい、と

 

だから私は今失いかけてる友人に対しても何も思わないし、これで切れてしまった縁ならそれまでだとも思っている。

 

それが例え10年に渡る友人関係だったとしても

 

 

初めてだ、こんなにも失うのが怖いと思った人間は。

 

 

私の元からいつか、離れて行ってしまう日が来るのだろうか。こんなにも恋しくて愛おしい恋人は、いつか私の上位交換が見つかれば私を捨てる日が来るのだろうか

 

そんな不安に押し潰されそうになる。

 

でもそんな不確定な未来のことを考えて気を病んでも時間が勿体無いことも知っているから、前を向くしかないことも

 

だめだ、眠い状態で書くと何が言いたいのか分からなくなるな

 

人を愛するということは、こんなにも自分が卑しくなるものか、と

 

改めて、深く愛せる人が恋人で良かったと思う日でした。

 

きっと彼ならこんな私でも受け止めて、受け入れてくれるだろうと信じているから

 

 

 

風と夜の匂いが君に変わる日

25歳のフリーターもどきが、今更になって人を好きになってしまった話をしようと思う。

 

仕事から帰ってきて、まずすることはゴミ捨て。それから、立て掛けておいたエアーベッドを倒し、座って煙草に火を点ける

カチッ、シュボッ、カチッと音が鳴るこの火付け役は、貰い物のジッポライターが役目を担っている。そしてこのジッポは、最近できた恋人の影響を受けたものだった

 

まだ恋人同士でない頃、何なら何も始まってすらいない頃に、初めてあの人を見た時に点けていたジッポの手捌きがとても格好良くて、思わず見惚れていたのをよく覚えている、

 

私が憧れていた人が、まさか恋人になるなんて、思いもしなかった。そもそも、自分なんかとても釣り合わないと思っていた、し、悲しいくらいに遠い人だと思っていた。

きっと、この人はこんなにも強そうに見えるのに、自分が惚れた人には弱さを見せるのだろう。でもそれはきっと、私なんかが見れることはないのだろうと思っていた。

 

それでも、どうにか近付きたくて、憧れて憧れて、あんな風になりたいと思っていた。自分が彼の特別な人になれなくても、あんなにも格好いい人の格好いい所を真似したいと思っていた。

そして、今年の春の終わりかけ、夏になる頃、私は家族にジッポライターを貰ったのだった。

 

こっそり、何度も練習したけど、あの人のようには点けられなくて、そもそも会うこと自体少なかったから、縁はないものだと思って、普通のライターに戻した。

 

それでもたまに、もう居なくなってしまった私の唯一の同期が、彼と飲んだりダーツをして遊んだりする時、なぜか同期が私を誘ってくれるので、そのままついて行って一緒に遊んだりした。今思えば、皮肉なことにあいつは私と恋人のキューピッド役だったのかもしれない。そう考えると、同期には感謝をしている

 

自分一人で彼を誘う勇気なんてなかったし、二人で何を話したらいいのかも分からなかったから、同期が彼と遊ぶのを心密かに楽しみにしていた。

 

会える口実なんて、そんなことくらいしかなかったのだ。

 

初めて会ったのは、自分の職場の別店舗にヘルプに行かされた時だった。とてもとても綺麗な顔をしているけど、貫禄と威圧感が凄くて、絶対自分より歳上だと思っていたし、怒られたらめちゃくちゃ怖そうだと思った。ストイックさがストレートに伝わってきて、緊張しかしなかった。でも面倒見が良くて、あ、いい人なんだ、ちゃんと優しい人だと思った。

 

仕事終わり、その店舗の人達でラーメンを食べに行った時、さらっと私の分までお金を券売機に突っ込んでくれていたりとか、温かいお茶を作ってくれたりとか、そういう優しい所をさりげなく見せてくれるところが好印象だった。

 

動画を観ていたから、ひょいと覗いたら自分の好きなアーティストの曲で、趣味も何気に被っていることも知ったし、営業終わりの店内に流した音楽も自分の好きな曲ばかりだった。

 

でも一番衝撃的だったのは、スタッフだったかお客さんだったかが、恋愛の話をしていた時に「自分は恋愛したらメンヘラなので」と言ったこと

そのそんな感じで嘘だろ!?と思ったし、でももしそうなら、そんな部分を見てみたいと強く思った。

 

それから、ほとんど何もなかったのだけど

 

 

またしばらく日が経ってから、久方ぶりにヘルプで入ることがあった。

とても久しぶりだなと思いながら、その日を結構楽しみにしていた。

 

何か水分ください、ってお願いしたらメジャーカップいっぱいのテキーラを飲まされたりしたけど、そういう掛け合いも楽しかったっけ

 

「この子は本当に飲む子だと思ったよ」

 

 

後から知ったのは、彼は私の三つ下だということを知った。

初めて知った時は大声で驚いたし、その後しばらく絶句していた。

 

 

前髪をさらりと指で分けられたり、指がひび割れて痛いんです、と話したら私の手を取って「ああ、これは痛いね」っと真剣に見てくれたり、外に行ってきます、と声をかけた時に、しばらく真顔でこっちを見てから、急にニッと笑った時に完全に堕ちたんだと思う

 

ああ、人って本当に「ドキッ」って音がするのだと、この時24にして初めて知った。

 

 

それからその後外に立っている時間、ずっと顔が熱くて心臓が苦しくて、ドキドキしていたことを今でも覚えている。

胸元が苦しくて苦しくて、くすぐったいような、寒いのとはまた違う震えがあった。

 

あの眼が今でも忘れられずにいるから、恋人になった今でも眼を見つめてしまう。

 

書類上、私の立場ではそんなことは許されない状況にあったから、それ以上のことは求められなかったし、早く忘れろ、と自分に言い聞かせて押し殺していたけど、同期と遊ぶ時に会えることを楽しみにしてしまっている時点で、もうどうしようもできていなくて、自分の感情を押し殺せないのは初めてだった。

 

私は比較的、自分の感情を殺すことは得意だった。諦観が根付いているからか、手に入らないものは手に入らない、諦めることはとても簡単に、かつ酷く冷静にできてしまっていたし、執着して足掻くことはほとんどしてこなかった。

恐らくそれは、家庭環境によるものなのかもしれないが

 

今回も、殺さないといけないと思った

この先を望んではいけないと思ったし、その資格もなければ立場でもなく、手に入らないし入れてはいけないもので、

 

私ではどうしようもない、私ごときではどうしようもできない

とてもあの人の傍に居ていい人間じゃない

そう思うことで、押し殺そうとしたけど、その日噛み締めた唇からは血しか流れてはこなくて

押し殺し切った時、私は少しだけ一人でこっそり泣くのだけど、涙が出てこなくて、どれほど唇を噛み切ってもその感情が殺せることはなかった。

 

そして、三月末、自店舗の副店長が退職した日、彼と同期と三人でダーツバーに行って遊んだ。

首元をずっと撫でられていたことも、覚えている

そしてその後、私は一人で晴海埠頭に行った。

晴海埠頭は自分の原点と言っても過言ではないほどの思い入れがある場所で、この場所には誰かを連れて行くことはしなかった。自分のためだけの場所だったから、例え歴代の恋人でも連れて行ったことはなかった。

 

自分の、自分のためだけの場所だと思っていたのに、余韻はこの海にまで付いてきてしまって、晴海埠頭は彼の場所でもあるようになってしまった。

 

まだ、恋人を連れて行ったことはないのだけど、いつか自分のけじめのためにも連れて行こうと思う

 

それから、毎日LINEをするようになった。

 

 

律儀に返してくれて、私も毎日返して、毎日連絡を取れることが嬉しくて仕方がなかった。

 

 

そこから、色々あって、会社のBBQがあった日以来、関係が始まったのだけど、その時はまだ関係性は不確定だったし、不安と期待が入り混じっていて、毎日が一喜一憂だった

 

バーで遊びじゃないよと言われたことも、嫉妬の話を聞いたことも、誰かと一緒になることを嫌だと言われたことも、今までずっと私が抱きつく形で抱きしめていて、彼は背筋を真っ直ぐにしたまま抱きしめ返すくらいだったのが、初めて体をかがめて抱き締めてくれたことも、「いつも浅いキスだね」って言ったら次の時に深いキスをしてくれたことも、何もかもを覚えている。

 

真夏の炎天下、一時間くらいかけて、自分の地元を案内してくれたことも、山から二人で街を見下ろしたことも、私の写真を撮ってくれたことも、今度はこっちの道だな、と「また」の約束をしてくれたことも、帰りに扇子を貸してくれて、「また返しに来い」と次の機会を作ってくれたことも、何もかもが格好良くて、その時の恋人が美しくて、会う度に強く強く惹かれてしまうことは、もう自分ではどうしようもできなかった

 

離婚なんて、考えたこともなかった。

 

何よりも、こんなにも人に強く惹かれたことがなかった。

 

いくつか恋愛はしてきた。長ければ短いものもあったし、裏切ることも裏切られることもあった。人間というものに触れ続けてきたつもりだった。

結婚してもなお、自分は一人の人に落ち着くなんてことはできないと思っていたけど、恋人に惚れた瞬間に全て今までの自分が砕け散った。

 

余裕なんて微塵もない、会いたくて会いたくて仕方がない。

手を繋ぎたい、声が聴きたい、匂いを嗅ぎたい、抱き締めたい、キスがしたい。

 

ただ触れ合っているだけなのに、まるで自分の皮膚と同化したような一体感、快楽を得たのは今まで経験したことがなかった。ただ、触れているだけ。例えば手を、体のどこかに置いているだけ。それでもあまりの多幸感と気持ちよさに、恋人はドラッグか何かと思ってしまう。

 

一緒に居るだけで癒される、顔を見れば美しいものがあって、何をしてても格好いいと思ってしまう、可愛いと思ってしまう。

 

何だかんだで、自分本位な人間だった。最終的には自分が一番大事で、人付き合いも保身に入る。常に計算をして人付き合いをしていたし、マイナスになるのならどれほどの付き合いがあってもばっさり切ってしまうような薄情な人間だった。

 

でも、恋人に惚れ込んでから、まず他の人なんて考えられなくなったし、一瞬で他の異性が吹き飛んでしまった。そして何より、この人のためならどんな犠牲をも厭わないと思った。そんなことを他人に思うのは初めてだった。

 

よく出てくる言葉だから、チープに感じてしまって私はあまり遣いたくないのだが、それでもこう言わざるを得ないのだ。

 

 

自分にとっては、恋人こそが運命の人であった、と

 

 

夫は本当によく尽くしてくれる。私のためならいくらでも時間をかけてくれるし、お金もほとんど自分のためには使わず、私が喜ぶ食材のため、ストックなどを買ってくれたり、どれほど酔っ払って帰っても、少なくとも酔いが醒めるまでは献身的に介抱してくれるような、そんな人だ。

 

恐らく、精神的には私以外を愛さないし、この先もずっとそうしてくれると思う。

私を最優先にして、一緒に色々な所に行こうと言ってくれる人だ。

 

世間的に見れば、非常にできた夫だと思うし、私もそれは思う。

 

でも、そんな夫を捨ててでも、そして例え相手の親からどんなに罵声を浴びようとも、仮に別れ話がもつれてボコボコにされることがあったとしても

骨の一本二本折ってでも、私は恋人の元に行きたい。

 

自分の何かを、どんなに大きい犠牲を払ってでも、血反吐を吐いて泥水をすする羽目になったとしても、それでも私は恋人の元に行きたい。恋人と一緒になりたい。

 

「愛している」という言葉を吐くことが苦手だ。

 

好き、大好き、まではまだ分かる。付き合っている、もしくは結婚している。対象とした異性と自分の時間を共有するわけだから、好意がない方がおかしい。

 

しかし、「愛」とは何なのだろう。

 

 

 

付き合ってきた男からは、皆寂しそうに「俺がどれだけ愛していると言っても、お前は返してくれないんだね」と不満を漏らされた。

 

簡単に愛だなんて、口にはできない。自分が愛が何なのか分かってないのに、わからないものを相手に渡し伝えるわけにはいかない。

 

その度に、「ごめんね」と返した。皆、残念そうな顔をしたり、時には怒ったり、時には首を締められたり殴られたりすることもあった。

そして、「愛されているのかわからない」と言われた。

 

元々は、私も口での愛情表現は苦手だった。

 

 

でも、今の恋人には自然と口から言葉が溢れ出てしまうので、もしかしたらこれが愛なのかと考える

 

 

 

 

 

もう一つ、恋人を好きな理由の中に、風の匂いがある。

 

 

恋人と一緒に居る時は、どうしてか風の匂いがいつも懐かしい。一緒に外を歩いているだけなのに、風がどこか懐かしくて、自分の潜在意識レベルの記憶から、頭の中で映像が映し出されたり、何かどこかの場面が何枚も写真のように張り出されているような感覚に陥る。そんな感覚に他人と一緒に居てなることなんてまずなかった。

誰かと一緒に居ても、常に自分の中の感性の窓を自分の中だけで開放させて、常に他人との感覚をシャットアウトしていたから

 

でも恋人は違うのだ。恋人と一緒に居る時にその強烈に懐かしい感覚に襲われるのだ。風の匂いも、見えているはずの景色の色も一変してしまう。そして、自分でも忘れていたような幼き頃の一枚を、匂いを、ふとその時感じた感覚を、鮮やかに蘇らせてくれるのだ。

 

御伽噺のように思われるかもしれないが、前世というものが存在しているのなら、絶対に恋人とは何かあったと思う。兄弟かもしれないし、夫婦かもしれないし、家族のどこかかもしれない。

 

それくらい、一緒に居て居心地が良すぎるのだ。

 

育ってきた環境も、考え方も性格も全然違うのに、どうしてこんなにも相性がいいのだろう。

 

不思議極まれることだが、とにかく言えることは、私は恋人のことが大事で、心底愛している。

 

 

早く引っ越して、籍のけじめをつけて、ただ一人の女として、あの人の所に行きたい。

 

 

 

25歳で、私は初めて本物の恋をしました。

ありがとう